今週の一冊:ライフサイエンス
- 2021年03月16日
- カテゴリー:本の紹介
毎週1回更新しているふなと川接骨院のブログも、3年目に突入しました。
昨年から始めたブログの内容を、お勧め本の紹介になりましたが、皆様の反応はいかがでしょうか?
本が苦手な方もいらっしゃると思いますが、本から学ぶことも一つの知識として、これから生きていくためのヒントがたくさんあります。
また、このブログを見ている方で「これおすすめだよ!」という本がございましたら、ご紹介していただけると嬉しいです。
コメントお待ちしております。
今週ご紹介する本は、「ライフサイエンス~長生きせざるをえない時代の生命科学講義」です。
著者は、大阪大学教授・生命科学者吉森保さんです。
細胞生物学を専門とし、細胞内の現象である「オートファジー」というものを、研究されている方です。
このオートファジーは、吉本先生の師匠大隅良典先生が、2016年ノーベル生理学・医学賞を受賞しています。
オートファジーとは「細胞を自分の中で、新品にする機能」です。
このオートファジーの研究が進み、大隅先生の研究により、がんやアルツハイマー病、パーキンソン病、脂肪肝や心不全などの病気を治せるのではないかと、世界中の製薬会社からも期待が高まっています。
生命科学と聞くと単語だけでも、すごく難しそうと思うかもしれません。
ですが、生命や人間のことを知ることで、こんなメリットがあります。
◆自分や誰かが病気になった時に、たくさんある選択肢の中から「自分にとってベストだと思える」選択がしやすくなる。
◆「健康に長生きするには何を食べたらいいか」「自分が長生きするには何を食べたらいいか」ということ。
人間の体は細胞が集まってできています。
その細胞が悪くなって始めて病気になります。
吉本先生が本書で知ってほしいことは「科学的思考」を身につけてほしいということ。
病気、寿命その未来のことまで理解、網羅でき、生命科学の基本から最先端までを、解説してくれています。
内容も専門用語を極力抑え、数式や化学反応式も一切出てこないので、とても読みやすかったです。
これからの時代は「科学的思考」を何故身につけるといいのか、という必要性が説明されています。
本書のテーマである生命科学は「病気」を知るのにとても大切な学問です。
昔も今も人類の最大の敵は「病気」。
人類が今も生き残っているのは、医学や広い意味で生命科学のおかげなんです。
少しだけ内容を御紹介します。
◇すべての生命の基本は、細胞
あらゆる生命の基本単位となるものは細胞です。
この細胞内の核にDNAがあり、この中に設計図がしまわれていることから重要な場所です。
細胞の数は生き物によって異なります。
人間の細胞の数は、少し前までは60兆個といわれてきましたが、実は37兆個の細胞からできていることがわかりました。
この数値がわかったのは、21世紀に入ってからで、2013年のことでした。
人間の細胞が60兆個にあることに疑問に思った人が、体の場所によって細胞の数や大きさが違うのでは、と気づいた人がいたのです。
人間の始まりは、卵子という一つの細胞です。
卵子の中に精子が入って受精し、受精卵が成長を始めます。
細胞分裂を繰り返し、最終的に37兆個になり、増殖が止まります。
それ以上は増えません。
細胞は死ぬまでの分裂が決まっています。分裂がコントロールされているので、私達の手は、3本4本になることはないのだそうです。
反対に、細胞が無制限に増えて、体に悪さをするのが「ガン」になります。
また、細胞が生命の基本単位だと考える理由は、大きく2つあることがわかりました。
ひとつひとつの細胞が生きていること。
これは、大発見で、これにより生命科学は大きく発展しました。
もう一つ大きな理由は、一つの細胞の中それぞれに、ひとりの人間をつくるすべての遺伝情報が入っていること。
遺伝子が生き物すべてを決めます。
体には数万種類の遺伝子があり、それをつくるために必要な情報を記録(コード)しています。
この遺伝子のセットをゲノムと呼ぶそうです。
◇病気について知ろう
恒常性(からだの中を一定の状態に保つ働き)を保つために働いているのが細胞です。
この恒常性が失われると、体は一定に保たれなくなるので、病気になります。
細胞がおかしくなる中で一番大きいのは、細胞が死んでしまうこと。
代表的な例で3パターンあります。
①細胞内にタンパク質の塊が溜まってその結果死んでしまう。
ある組織、臓器の細胞がごっそり死んでしまうことを「変性疾患」といいます。
その中でもっとも有名な疾患が神経性疾患です。
アルツハイマー病、パーキンソン病が代表的な疾患になります。
タンパク質の塊が溜まって、細胞が死んでしまうことが大半の理由になります。
タンパク質はくっついて、かたまってしまうと、働かなくなって、細胞の機能を邪魔し、死に追いやってしまうのです。
②ウイルスなどの病原体に殺されてしまう
そもそもウイルスを説明すると、ゲノム(人間を一人つくるのに必要な情報の集合体)と殻からなる単純な構造をしていて、自分の力で増殖する自立ができません。
では、どうやってウイルスは生きていると思いますか?
それは、他の生き物の細胞に侵入し、相手の細胞の中で、その細胞の翻訳係などを利用して、自分のタンパク質をつくっているのです。
人間に感染するウイルスはごく一部。
生きている細胞の中でしか存在できないので、宿主が死ねばウイルスも死にます。
そして、ウイルスが生き延びていくために、強毒性があるものがありますが、宿主に対して徐々に毒性がなくしていくことが多いのです。
なので、流行中の新型コロナウイルスも弱毒化する可能性もありそうです。
ちなみに新型コロナウイルスの感染ですと、免疫システムで過剰反応の一つである「サイトカインストーム」が死因のひとつでもあるようです。
③細胞内の「原発事故」が原因で死んでしまうケース
体の中には、エネルギーをつく強力な存在、ミトコンドリアというものがあります。
もし、このミトコンドリアが壊れてしまうと活性酸素という「毒」が出ます。
例えて言うなら、ミトコンドリアは、エネルギーをつくる発電所のような存在です。
原発くらいの威力があると思ってください。
原発が壊れると放射性物質が漏れるようなこと想像していただければと思います。
ミトコンドリアがエネルギーをつくるとき、この活性酸素が発生します。
活性酸素は老化を進行させ、生活習慣病の原因になるといわれています。
ミトコンドリアが傷つくと活性酸素が制御できなくなり、また、遺伝子にも変異を起こすことがあります。
ほかの物質にも反応しやすいため、タンパク質やDNAなどにも悪さをします。
本書の内容を、少しだけご紹介しましたが、さらに詳しく知りたいという方はお手にとってみてください。
私たちが、いまこうして在るのも、さまざまな研究者の仮説と検証を経て、積み上げてきた功績があるからこそだと思います。
特に生命に関しては、これからも研究が進み、新たな発見があるかもしれません。
情報過多な時代に、理解できないことや、知らないことがどんどん増えていくと思います。
現在解決できない病気、ウイルスも地道な生命科学研究の先に、治療法が見つかることでしょう。