今週の一冊:漫画で分かる中村天風の教え
- 2021年06月15日
- カテゴリー:本の紹介
今週ご紹介する本は、原作さとうもえさん、監修を公益財団法人 天風会が行った「漫画で分かる中村天風の教え」という本について、ご紹介していきます。
私は前回、「あなたはあなたの言葉でできている」という本を読みましたが、本書は前回読んだ本と比較するとより深いお話と実践的な言葉が多数書かれているので、ブログを読んでいただいた方に、是非お勧めしたい本です。
タイトルにもある通り、マンガでストーリーを楽しみながら、中村天風さんの教えを分かりやすく、細かく読み取れる作品となっております。
「中村天風って誰?」と思う方もいると思いますので、簡単にお話していきます。
明治9年(1876年)東京生まれで、少年時代から聡明な方でしたが、負けず嫌いで喧嘩ばかりをしており、手を焼いた両親は福岡の知人に預けます。
そこで天風は福岡の名門、修遊館に進学しますが、柔道の試合の遺恨から出刃包丁を持った中学生と、もみ合いになってしまい、その中学生は死亡してしまいます。
正当防衛で釈放はされますが、退学処分となってしまいます。
その後は玄洋社(政治集団)を率いる頭山満に書生として預けられます。
頭山の勧めで陸軍の諜報活動に携わり、日露戦争で活躍します。
しかし終戦後、肺結核を発症してしまいます。
当時、肺結核は治療法がなく、死病とされていました。
自ら医学の研究をして回復を試みますが、状態は変わらず、心まで弱々しくなっていきます。
そこで天風は、強い心を取り戻したいと宗教に救いを求め、様々な宗教も指導者を訪ね、哲学や心理学などの本を読み漁りました。
しかし求めていた救いは、得られませんでした。
さらに天風は、日本よりも進んでいる欧米に救いがあると信じ、海を渡ります。
アメリカ、ヨーロッパを巡り、哲学や心理学の専門家のお話を聞いて回りますが、そこでも救いは得られませんでした。
絶望した天風は、せめて死ぬなら日本でと帰国を決意します。
その帰路でインドのヨガの哲学者、カリアッパ師と出会います。
ヨガ哲学は心だけでなく、心と体の両面から人間を考えるもので、天風は師に従って、ヒマラヤ山脈の麓でヨガの修行を始めました。
修業は3年近くに及びましたが、天風はついに悟りを開き、肺結核も完治してしまいます。
日本に戻ってからは複数の企業の経営に参画。
そんなある日、人前でインドでの経験を話すことになりました。
天風の語りに人々は感動し、天風もみんなの喜ぶ様子を見て、インドで習ったことを人々に広めるべきだと考えます。
その後は実業界から一切身を引き、インドで学んだ訓練法を誰にでも学べるように体系づけ、「統一哲医学会」(現在の公益財団法人天風会)を設立し、昭和43(1968)年、92歳でその生涯を終えます。
中村天風さんは肺結核に罹った際、外側に救いを求めました。
日本からアメリカ、ヨーロッパを渡りながら、多くの専門家達にお教えを乞いますが、求めていた救いは得られませんでした。
しかしインドでカリアッパ師に出会ったことで外側ではなく、自身の内側、「心」の持ちよう1つで、生きていることそのものが、変わっていく事を悟ります。
つまり、「心」や「考え方」次第で自分の運命や未来を変えること、乗り越えることが出来るのです!
では、本書に書かれている天風さんの言葉をご紹介しつつ、分かりやすいように要約をしていきます。
◎運命というものには2種類ある。どうしようもない物を天命といい、人間の力で打ち開くことのできるものを宿命という。
運命と宿命の2つを辞書やネットで調べてみると、両方とも「自分の力では変えることができない」を意味をしています。
しかし天風は、運命に新しい定義をしました。
運命には、人間にとっての絶対的な「天命」と相対的な「宿命」の2種類があるとしたのです。
そして運命は「宿命」が大部分であると説きました。
つまり、運命を開けるかどうかはすべて、自分自身の力にかかっているのです。
では、どのようにすれば乗り越えられるのか?
天風さんは次のような言葉を残しています。
「自分の心を、積極的にして活きるという方に自分の心を決定しなさい。そうすればもう、天命なんてものは、極めて僅かなものしかない。」
時には、腹の立つことや悲しい事があると思います。
しかし、その思いに執着して立ち止まらずに前へ進むこと、積極的な心を持つことが大切です。
私はどちらかというと消極的な考えが以前ありました。
失敗した思いを持ち続けていると、同じ失敗を重ねてしまったり、負のスパイラルから抜け出せなくなる感覚に襲われることがよくありましたが、考え方ひとつ、心の持ちよう一つで変わることを、先輩方や本を通して学ぶことが出来ました。
「でも、運命なら良いも悪いも自分で選ぶことはできないでしょ?」と思う方がいると思います。
確かに選べるならこんなに苦労をする事はほとんどないでしょう。
しかし選ぶことはできなくとも、招くことはできるのです。
「常に最高な運命を招くべく、いかなるときにも、全てに感謝と歓喜に振りかえるよう、積極的な態度を心に銘じて生きるように努力しよう。」
天風さんの唱える感謝と歓喜とは「今生きている事に感謝して、喜びを感じる」という事です。
私たちは普段、生きていることを当たり前だと思っています。
しかし、人間は、自分の力でこの世に生まれてきたわけではありません。
病気など、人生にどんなことがあっても、この世に生を受け、今、現在、生きているということに感謝していくと、その先には必ず、喜びと感謝、笑える毎日がやってくると説いています。
悪いことが立て続けに起こる負のスパイラルがあるように、良いことが起こり続ける正のスパイラルもあります。
その最大の違いは、先ほども述べた「積極的な心」と「感謝と歓喜」だと思います。
消極的な状態のままで行動をしても、いい結果に繋がることはほとんどありません。
生きていること、当たり前になってしまっていることに感謝をし、積極的、前向きな心と行動で、喜びを分かち合い続けることが、幸せであり続ける秘訣だと感じます。
ここまでは「積極的」をメインにご紹介させていただきました。
次は「消極的」に焦点を当てて、お話をしていきたいと思います。
「心配したり悲観したりする習慣を、習慣とも気づかず、悪い癖とも反省しないで、人間共通の通有性というように、間違えて、ますますやっていると、人間の光明をどんどん闇にする哀れな気分だけが、人生を支配するようになってしまう。」
「人間共通の通有性」とは、共通して備わっている性質のこと指します。
つまり、心配したり、悲観したりするのは、人間としてのあたりまえの感情だということですが、天風はそれを習慣であり、悪い癖だと説きました。
ほとんどの感情は、自分が今まで経験したり、人から聞いたことなどによって、形作られています。
つまり感情というのは、絶対的ではなく、相対的なモノであり、コントロールできることが可能なのです。
もちろん消極的な感情を感じなくなるようにはなりません。
しかし、消極的な感情が沸き起こっても、それに執着しないようにすることはできます。
そうすることにより、前向きな一歩を踏み出すことが出来、人生に新たな光を見つけられるのです。
しかし、それでも人によってはまだ恐ろしい物があると思います。
それは「恐怖」です。
恐怖が、いざ自分にのしかかってきた時、皆さんはどのように対処しますか?
天風さんは、次のように語っています。
「この世の中や人生には、滅多矢鱈に恐ろしいということはありはしない。恐ろしいと思っているのは、自分の心なのである。」
天風さんにとって恐怖とは「絵に描いたシミのようなも」であったそうです。
つまり、消せばなくなるということです。
恐怖を感じているのは、自分の心であって、本当に怖い事はそう滅多にはないということです。
「消せばいいったって、そう簡単に消せないでしょ!」と、皆さん思っていらっしゃるかと思います。
しかし、視点や考え方によっては、恐怖を恐怖と感じづらくなるはずです。
1つ例を挙げてみましょう。
皆さん、昔に学校の先生や両親に、すごく怒られたことはありますか?
思い出していただくと、ほとんどの方は怖かった経験があると思います。
しかし、今その記憶を思い出したとき、恐怖を感じますか?
中には笑い話の種として使う人もいるように、ほとんどの人が恐怖を感じないと思います。
そう、恐怖とはずっと続くものではなく、一時の物なのです。
時間が経つにつれて経験を積み、成長を続けることで恐怖を感じる度合いや種類が変わり、過去にあった恐怖を恐怖と感じることが無くなる。
つまり「恐怖が消えている」のです。
確かに、今目の前にある恐怖をすぐになくすことは難しいでしょう。
ですが、その恐怖を乗り越えた先には、きっと怖かったことなど笑い飛ばせるほど、大きく成長できるのではないかと私は思います。
いかがだったでしょうか?
中村天風さんの残した言葉の中から、一部抜粋してご紹介をさせていただきましたが、まだたくさんの種類があり、その一つ一つが、人間とはどうあるべきなのかと、考えさせられるものとなっております。
迷い、悩み、苦労など、消極的な考えから抜け出せない方、これからより積極的になりたい方などにお勧めの本となっております。
本も様々な種類がありますので、このブログを読んでご興味が湧いた方は是非一読頂ければと思います。