今週の一冊:心をつかみ人を動かす説明の技術
- 2021年06月22日
- カテゴリー:本の紹介
今回紹介する本は「心をつかみ人を動かす説明の技術」です。
「グローバル化で日本人の仕事がなくなる」
ニュースなどでよく取り上げられる話ですが、本当にそうだと気づかされた小さな「事件」を体験したそうです。
著者はシャツをオーダーするのが好きで、ここ5年くらいは業界でも定評があるCという店の常連です。
でも、あるとき、インターネットでオーダーシャツを注文できるのを知って、ふと「浮気」をする気になりました。
驚くことに、日本で注文すると安いところでも5000~6000円するようなシャツがなんと1980円で買えるのです。
しかも、細かい要求にも答えてくれて、すっかりファンになりました。
その安さの秘密は国外製産。
シャツをオーダーするウェブサイトを運営しているのは、タイの会社とのことです。
ただ、一消費者としてみると、とてもうれしいこの体験も、日本のビジネスパーソンという観点では危機感を覚えたそうです。
1つの日本の企業が、タイの企業との競争に負けて、顧客をとられたというのが、この体験のもう一つの側面です。
そんな、世界の人と戦って仕事を確保しなければいけない中、「日本のビジネスパーソンに何が必要か」という問題意識にかき立てられて書いたのがこの本です。
グローバルに戦うために、日本人が真っ先に身につけなければならないものは「コミュニケーション力」です。
◇3つの手法で「説明力」をアップする
「よし、説明力をアップしよう!」と思った人に、お得な情報として真っ先に試してほしい3つの手法を紹介します。
①「たとえ話」で頭の中に入ってくる
技術的な詳しい話は省いて、そのメリットを誰もが知っているものに説明してあげると、すっきりとわかってもらえること間違いなしです。
②「ビジネスの東京ドーム理論」でモノサシを提供する
そして、もうひとつの「秘策」は「ビジネスの東京ドーム理論」。
何か広い場所、例えば東京ディズニーランドの面積を表すときに「東京ドーム17個分」という表現がありますが、これをビジネスの世界にも応用するのです。
つまり、相手にとってなじみのない数字を出すときには「モノサシ」代わりになるものを、一緒にするというのが「ビジネスの東京ドーム理論」です。
③専門用語は「あと出し」で解説
そして、最後の仕掛けが「専門用語あと出し法」です。
たとえ話で、コンセプトそのものを分かってもらった上で、あとから「このような考え方を専門用語では〇〇といいます」と解説する「専門用語あと出し法」を使います。
このようにすれば、難しいカタカナ言葉も、すんなりと頭に入ってくることができます。
◇「ダラダラ説明症候群」には情報のグルーピング
自分でも、ここのところ仕事が上手くいっていないと分かっているせいで、丁寧な説明を心がけているのですが、それがかえってアダとなってしまい「ドツボにはまった状態」で、落とし穴に嵌ったのを必死に逃れようとしたら、かえって別の落とし穴に嵌るという事は、誰もが経験のあることだと思います。
そんなときにお勧めするのは「情報をグルーピングする」ことです。
まずは、ちょっとだけ視点を変えてほしいのです。
コミュニケーションが下手な人は、意識が自分だけに向いて「どう言ったらいいだろう?」「何て説明しよう」となりがちです。
でも、本当のところは、コミュニケーションの中心は、自分ではなくて聞き手。
聞き手が「わかった」と思えたときに、はじめてコミュニケーションが成立したと言えます。
人間が一度に頭にいれることができる情報の数には限りがあります。
話がどこまで続くか見えないと、聞いているだけで苦痛になります。
これを避けるために心がけたいのが、情報のグルーピングです。
ばらばらとある情報を3つのグループに集約して説明すれば、相手に伝わりやすくなります。
グルーピングが「説明の技術」の最初のステップです。
◇「伝えたい」というマインドがあれば上達できる
大切なのは「何かを相手に伝えたい」ということです。
いろいろ書いてある方法も「伝えたい」というマインドがなければ使いようがありません。
「こうしましょう!」と言いきる、そしてそれをなんとしても相手に伝えて、納得してほしい。
そんなマインドがある人は、最初はできなくても一度コツさえつかめば、みるみるうちに「説明の技術」を身につけることができます。
「説明の技術」には、実はロジカルシンキングの要素が盛り込まれています。
「言い切る」ことによって聞き手に「伝える」結論のことを、ロジカルシンキングの世界では「主張」、その主張のもとになった調査結果を「根拠」といいます。
「大きな声で言い張る」とか「絶対に相手を納得させてやる」と肩に力が入る方もいるかもしれませんが、いい意味で軽い気持ちで「言いきり」ましょう。
「日本人のコミュニケーション力をアップしたい」という想いを、この本では「説明の技術」というキーワードにまとめて紹介しています。
コミュニケーション力は、「持って生まれた能力」と誤解されがちですが、実際のところは、言いたいことが伝わるかどうかは「技術」です。
物事をわかりやすく説明するためのノウハウ、聞き手の気持ちを動かす方法論など、ポイントを知れば、これまでとは違う圧倒的な伝わり方を誰もが後天的に身につけることができます。
論理と心理を駆使して相手に「わかった!」と思ってもらうための「説明の技術」がつまっている本なので興味のある方は読んでみてください。