スポーツ障害について~野球肘~
- 2019年10月01日
- カテゴリー:痛みの原因と対策
今月のテーマはスポーツ障害についてです。
①スポーツ障害とは?
同じスポーツを続けることにより、
筋肉や関節に負担がかかることで
起きる症状のことです。
今回はその中の一つである野球肘について
紹介していきたいと思います。
②野球肘とは
野球の投球動作により
繰り返し肘に負担がかかることで
起こるスポーツ障害です。
そのほかの投球動作のあるスポーツでも
起こる可能性はありますが、
野球の投球動作ほど肘の同じ部分に
負担がかかり続けるスポーツはありません。
特に成長期である小中学生の関節付近には、
大人の成熟した骨に比べて
明らかに弱い成長軟骨といわれる軟骨があります。
成長軟骨とは骨を長くするために
必要な軟骨で成長軟骨があるため
成長期には骨が大きくなっていくのです。
ただ先ほど言った通り、
弱い部分なので負担がかかりすぎると
スポーツ障害として症状が出てきてしまうのです。
したがって、野球をしていて肘に痛みが出たり、
動きが悪いなどの症状が出た場合は
野球肘が疑われます。
③野球肘の種類
野球肘には、
肘の内側に痛みが出る「内側型野球肘」と、
肘の外側に痛みの出る「外側型野球肘」があります。
腕を下げて手のひらを前にしたときに
体に近い肘が内側の肘、
反対側が外側の肘となります。
割合的には内側型野球肘のほうが圧倒的に多く、
野球少年の多くは肘の内側の痛みを訴えます。
③-1内側型野球肘
内側型野球肘は、投球動作によって
肘の内側に引っ張られる力が働き、痛みが出ます。
骨の成長が終わっている高校生以降では、
骨と骨をつないでいる靭帯が引き伸ばされることで、
骨が成長しきっていない少年期では
靭帯が付着している成長軟骨部分に痛みが出ます。
内側型野球肘の場合、
骨にまで負担がかかっていないため、
重症となることは少なく、
多くの場合は安静にすることで
症状は落ち着いていきます。
③-2外側型野球肘
外側型野球肘は、
肘の上にある上腕骨といわれる骨と
肘の下にある橈骨(とうこつ)といわれる骨が
投球動作でぶつかり合うことで痛みが出てきます。
繰り返しぶつかり合うことで、
骨の表面にある関節軟骨といわれる部分を
傷つけてしまいます。
割合としては少ないほうですが、
痛みを我慢して投球動作を続けていくと
骨と骨がぶつかることで起きているので、
悪化してしまった場合、手術が必要になることが
あるので注意が必要です。
もし外側型野球肘になってしまった場合、
治るまでに半年~一年ほどかかってしまう
可能性があるので気を付けましょう。
④野球肘の予防~投球数~
野球肘の場合特に多いのはやはり投手になります。
ほかの守備の選手に比べて
投球数も全力で投げる頻度も多くなるので
野球肘にならないようにしっかりとした
予防をしていく必要があります。
予防にもいろいろありますが、
まず第一に痛みを作ってしまっている原因は
繰り返し動作になるので投球数を減らす必要があります。
投手の場合、投球制限も視野に入れる必要があります。
現在では、
小学生の場合は
一日50球以内、試合を含めて週200球を超えないこと。
中学生は、
一日70球以内、週350球を超えないこと。
高校生の場合は、
一日100球以内、週500球を超えないこと。
というように学生別に
ある程度の投球数に制限が設けられています。
さらに小学生では練習時間においても
週3日以内、一日2時間を超えないようにすること
といった取り決めもあったりします。
すでに痛みが出始めてしまっている時は、
キャッチボールなどもしないようにして
極力ノースロー(ボールを一切投げないようにすること)を意識しましょう。
キャッチボールだけでも痛みを悪化させてしまう
可能性があるので安静でいることを
心がけてみましょう。
④野球肘の予防~投球フォーム~
次にフォームの改善に意識を向けてみましょう。
いくら投球数を減らしても
肘に負担のかかる投げ方をしていては
またすぐに痛みが出てきてしまいます。
投球時、肘の位置がどのあたりで動いているか、
肘よりも高く肩を上げられているか、
ボールを手放す際の力の入れ方などに
一度意識を向けて投球フォームを変えてみましょう。
鏡の前でシャドーピッチングをしたり、
ほかの人に投球動作をとってもらったりすることで
より今の投球フォームを把握することができるので
まずは自分のフォームを確認してみて
改善すべき点を見つけてみましょう。
④野球肘の予防~柔軟性~
野球をするうえでは
やはり柔軟性も必要になってくるので、
体の柔軟性も野球肘の予防につながってきます。
ここで気をつけたいところは
痛いところだけストレッチするだけでは
意味がないというところです。
投手に限らずボールを投げる場合
足腰を使ってその力を握っているボールに
伝わるように投げるため
ボールを早く投げることができます。
もし、股関節や太ももなどの筋肉に柔軟性がなく、
うまく力を伝えきれないと、
上半身の力だけで投げることになってしまい、
手投げの状態になってしまい
肩や肘にかかる負担はとても多くなります。
したがって、
肘周りのストレッチだけでなく、
股関節周りや太もものストレッチも行い
投球時に下半身の力を
うまく伝えられるような体にしていきましょう。
④野球肘の予防~筋力アップ~
あとは投球時に負荷に耐えられるだけの
筋肉をつけてあげましょう。
柔軟性があったり、投球数を減らしても
投球時に耐えられるだけの筋力がないと
故障の原因になってしまいます。
ボールを握るために必要な握力であったり、
投球時に使う腕周りや肩甲骨周りの筋肉を
鍛えてあげることで故障しにくい体になります。
頻度的には週2~3回で
負担にならない程度の回数で筋トレをしてみましょう
このようなことを意識することで
野球肘になるリスクを大幅に下げることができます。
今では少年野球をやっている中で
10~30%は野球肘になっている、
もしくはその可能性があるといわれています。
当院ではストレッチ指導や簡単な筋トレの指導、
ちょっとした生活指導などもしているので
もし、投球時に肘に違和感を感じる、
ボールが投げづらいなどの症状がある場合は
一度相談してみてください。